組合員のみなさま、今年も春闘の時期がやってきました。
ところで「春闘」ってなんだろう?っていう人、多いんじゃないでしょうか。
そこで、春闘について抜き出して紹介します。
興味を持ったかたは、いろいろ検索してみてください。
ちょっとずつ勉強していきましょう。
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春闘ってなんだ!?
私たち日本の労働組合にはおなじみの「春闘」ですが、実は春闘は日本独特のものであり、外国にはありません。なぜ春闘という、日本固有の闘争方式が生み出されたのでしょうか。それは日本の労働組合の組織形態と切り離せない関係があります。
日本の労働組合、とりわけ民間の労働組合のほとんどは企業別に組織されています。日本では当たり前のように思われていますが、こうした企業別組合という組織形態も日本独特のものなのです。外国、とくに日本の労働運動の先輩であるヨーロッパやアメリカでは労働組合は職種や産業別で一つの労働組合として組織されています。たとえばアメリカの自動車産業でいうと、GMだろうがフォードであろうが、自分の勤める会社に関係なくUAW(全米自動車労組)というひとつの組合に組織されます。
日本固有の企業別組合の最大の弱点は、企業間競争にまきこまれやすく、労使関係において強い交渉力を発揮しにくいという点にあります。自社だけ人件費が高くなると他社との競争力が落ちるという主張に反撃できないとか、使用者と被雇用者という従属関係がそのまま労使関係に反映されやすいといった問題を抱えています。また企業内に閉じこもりがちとなり、産業全体、労働者全体が取り組むべき課題には腰が引けてしまうという弱さを構造的に持っています。
こうした企業別組合の弱点を克服する仕掛けとして編み出されたのが、春闘です。産業別労働組合が中心となり、日本全国の労働組合が同一時期に統一的な要求をかかげ、いっせいに回答を引き出して、より高い水準に到達することを労働組合が足並みをそろえて追求するという闘争形式がつくりだされたのです。
◎春闘の輝かしい成果
1955年に始まった春闘は、鉄鋼、電力、電機、私鉄など当時の主要産業を前面に押し出し、いち早く高額回答をこれらの産業で引き出して全体の指標とし、最終的には中小企業の賃金相場にも影響を及ぼして、日本人全体の生活水準の改善に大きな役割を果たしました。私鉄総連などでは「交通ゼネスト」に代表されるような大規模のストライキを構え、産業別労働組合の集団交渉によって賃金改善を勝ち取ってきたのです。この結果、日本は「一億総中流」といわれるほどに格差が小さく、平等度の高い社会を1960年代から70年代にかけて実現することができたのです。
また春闘は、大幅賃上げだけでなく、年金制度の改善や地域別最低賃金の導入、老人医療費の無料化など国民的課題の実現にも大きな役割を果たしました。
◎春闘の後退
こうした春闘の高揚に危機感を抱いた財界は、労務政策を担当する日経連(当時)が賃金抑制に総力をあげ、生産性の上昇率以下に賃上げを抑えるという指標を掲げて、春闘を抑え込む姿勢を強化しました。一部の民間単産にもこの路線に積極的に協力するところが現れ、70年代半ばからは労働側の「春闘連敗」という状況が続いています。交渉も集団交渉から個別交渉に移行する企業が増え、春闘の状況も大きく変化してきています。今や財界の総本山である日本経団連は「春闘は終焉した」と豪語し、横並びで賃上げすることなどもはやありえないと言い放っています。
◎日本社会の矛盾をなくすために、春闘の再生を!
1995年に日経連が打ち出した「新時代の日本的経営」は、正社員を基幹的労働に限定し、専門的業務や技能労働、一般業務を派遣労働者や有期契約労働者に置き換えることを提唱しています。この結果、非正規労働者は増加し、格差はアメリカに次いで先進国で2位となるまでに広がっています。最近では偽装請負や違法派遣の横行が表面化し、ワーキングプアや貧困層が拡大するなど、労働者をめぐる矛盾が広がっています。
日本の社会にひろがる矛盾を解消するためには、春闘の再生が不可欠です。労働組合の組織形態に劇的な変革が起きるような事態がない限り、日本の労働組合が持つ最大の武器が春闘であることに変わりはありません。春闘が本来の輝きを取り戻すためには、すべての労働組合が春闘の原点に立ち返り、春闘への結集を強めることが必要です。
民放労連労働組合読本
労働組合活性化マニュアルP44~46より引用
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キーワード:
定昇とベースアップの違い